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【プレスリリース】「トリプロン」がスピン流を伝搬することを実証- 極小スピン回路などでの活用に期待 -

掲載日2021.8.31


概要

東北大学金属材料研究所齊藤研究室のYao Chen博士課程学生(当時)と、東京大学大学院工学系研究科/東北大学材料科学高等研究所の齊藤英治教授らを中心とする研究グループは、岩手大学理工学部の大柳洸一助教、茨城大学大学院理工学研究科(理学野)の佐藤正寛准教授、東京大学大学院総合文化研究科の塩見雄毅准教授、東北大学金属材料研究所の藤田全基教授、南部雄亮准教授、Yifei Tang博士課程学生、東京大学物性研究所益田隆嗣准教授らと共同で、トリプロンと呼ばれる準粒子(注1)がスピン流(注2)を伝搬することを実証しました。

電子の磁気的な性質である「スピン」の流れをスピン流と呼びます。スピン流は電子の電荷の流れである電流と対比され、電流では不可能であった省電力による情報伝達や情報処理、エネルギー変換などに利用できるため、次世代のエレクトロニクスの候補「スピントロニクス(注3)」の重要な要素と期待されています。従来スピン流はその磁気的な性質から金属や磁石などが主な研究対象とされてきましたが、近年、磁気秩序を持たない「量子スピン系(注4)」と呼ばれる物質群において従来と全く異なるスピン流の存在が明らかになってきました。

「量子スピン系」と呼ばれる物質群の中の「ダイマースピン系(注5)」と呼ばれる物質群において、トリプロンがスピン流の担い手となることがわかりました。本研究によって、スピン流を活用できる物質がさらに拡張され、スピントロニクスの研究にさらに促進されることが期待されます。

本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に2021年8月31日(英国時間)にオンライン掲載されました。

【用語説明】
注1 準粒子:物質の内部で生じる物理量の変化(揺らぎ)が、物質中で粒子のようにふるまう現象のこと。結晶を構成する原子の位置の揺らぎに対応したフォノン、磁石を構成するスピンの揺らぎに対応したマグノンなど様々なものがあり、トリプロンも準粒子の一つ。
注2 スピン流:電子の磁気的性質である「スピン」の流れのこと。
注3 スピントロニクス:電子の磁気的性質であるスピンを利用して動作する全く新しい電子素子(トランジスタやダイオードなど)を研究開発する分野のこと。
注4 量子スピン系:スピンのもつ量子力学的な特徴(ゆらぎなど)が顕著に表れる系であり、物質中で生じる量子力学のもつ不思議な性質を調べるのに適した系とされている。
注5 ダイマースピン系:磁気的な相互作用の強弱が交代することによって、スピンが2個ずつ強く結合するダイマー状態(スピン対)と呼ばれる状態をとる系のこと。
注6 マグノン:磁石の内部で整列したスピンの向きの揺らぎのこと。物質中で、粒子のようにふるまう。
注7 スピン液体:スピン相関があるにもかかわらず、長距離秩序がないスピン状態。スピン同士はお互いの向きを知っているものの、スピンの向きが全て同じであったり、互い違いになったりと、秩序を持たない。

本研究は、以下の助成等を受けたものです。
?科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ERATO?JPMJER1402「齊藤スピン量子整流プロジェクト」(研究代表者:東北大学齊藤教授)
?科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST?JPMJCR20C1「非古典スピン集積システム」(研究代表者:東京大学齊藤教授)
?科学研究費助成事業20K22476?研究活動スタート支援「常磁性体/金属接合における界面スピン注入の研究」(研究代表者:岩手大学大柳助教)

【掲載論文】
掲載紙:Nature Communications
論文名:Triplon current generation in solids
著 者:Yao Chen 東北大学金属材料研究所/大学院工学研究科応用物理学専攻 博士課程3年(当時)
佐藤 正寛 茨城大学理工学研究科(理学野)物理学領域 准教授
Yifei Tang 東北大学金属材料研究所/大学院理学研究科物理学専攻 博士課程1年
塩見 雄毅 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 准教授
大柳 洸一 岩手大学理工学部物理?材料理工学科マテリアルコース 助教
益田 隆嗣 東京大学物性研究所 准教授
南部 雄亮 東北大学金属材料研究所 准教授
藤田 全基 東北大学金属材料研究所 教授
齊藤 英治 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 教授/東北大学材料科学高等研究所 教授
公表日:2021年8月31日
URL:https://www.nature.com/articles/s41467-021-25494-7
DOI:10.1038/s41467-021-25494-7

本研究成果の詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。